シャープ液晶の新技術「UV2A」の何がすごいか

シャープ、コントラスト1.6倍の新液晶パネル技術「UV2A」 - AV Watch
この間発表されたシャープの液晶の新技術「UV2A」についていろいろ調べたのでまとめてみた。

今までの液晶はどうなってたか

シャープの液晶はVA方式の中でも、ASV方式というのを使っている。*1
液晶ディスプレイは、2枚のガラス板の間に液晶がサンドイッチされた構造をしている。液晶の分子に電圧をかけることによって並び方を変えることで、光をさえぎるシャッターの役割をしている。VA方式では、細長い液晶分子がガラス板に対して、寝たり起きたりすることでシャッターの開閉を行う。
このとき、液晶分子が寝起きする向き(縦とか横とかななめとか)を思い通りの方向にそろえてやる必要がある。これをやらないと、液晶分子が好き勝手な向きに並んで、偏ってしまう。この偏りが視野角悪化や表示ムラの原因になる。
これを防ぐために、液晶分子の向きが偏りなく散らばるようにしたい。そこで、ガラス板の表面にリブという三角形の突起物をつくり、電極にはスリットを作ってやる。そうするとリブとスリットにそって液晶分子が並んでくれるので、リブの作り方しだいで、思い通りの向きに液晶分子を並ばせることができる。いろいろな方向に並ぶようにリブを作れば、向きの偏りを発生させることがなくなり、視野角やムラを改善できる。

今までのVA液晶の問題点

リブやスリットを使って液晶分子の向きをそろえているのだが、そのリブの存在が逆にデメリットも生じさせている。

まず、リブを画素の中に構築しなければならないので、リブが光をさえぎってしまう。そのため光の透過率が悪くなってしまい、輝度や電力が悪化する。
また、リブに接している部分の液晶分子はリブの傾斜にそって傾いて並んでおり、電圧をかけてもあまり動いてくれない。なので、電圧をオフして液晶分子を起こしてやろうとしても完全には起きてくれない。液晶分子が起きている状態が画面が黒を表示している状態なのだが、完全に起きてない部分のせいでそこから光が漏れる。そのことが黒表示が完全な黒にならない黒浮きにつながっている。

UV2Aだとどうなるのか

UV2Aの場合、リブを作るのではなく、「配向膜」という高分子がついた膜を利用する。この高分子にそって液晶分子の向きがそろうことになる。高分子の向きは光の当て方によって自在に制御できるので、液晶分子の並ぶ向きも自在に制御することができる。この技術は「光配向」と呼ばれている。
したがって、光配向を利用することでリブを削除することができるので、光を邪魔する構造物を取り払うことができ、光の透過率を改善できる。また、リブがなくなることで電圧オフ時に液晶分子をきちんと起こしてやることができるようなるので、光漏れを低減することができ、黒浮きを押さえコントラストの向上を狙える。
さらに、こういった構造物を作る必要がないので、その分の製造工程を省くことができ、生産性の向上、つまりコストダウンにつながる。

シャープの発表では、応答速度も向上するとある。いままではドミノ倒し的に動いていた液晶分子が、UV2Aではいっせいに動くことができるため、とのこと。これに関してはなぜそうなるのか資料が見つからず、理屈はよく分からなかった。

ちなみに

VA以外の液晶(TNとかIPS方式)の場合は、そもそもリブがないのでこういう問題は起こっていなかった。TNやIPSの場合、リブを作るのではなく、ガラス表面を布などでこすってやることで、液晶分子がその方向に沿って並ぶようになる。*2が、こすっただけなのでそれほど精度よく液晶分子の並びを制御できているわけではなく、それが黒表示時のムラや黒浮きにつながっているという面もある。


UV2AによってシャープのVA液晶の透過率が、他社の方式に比べてどうなったのかは資料が見つからず不明。もともとIPS方式の方が透過率が良かったのだが、それに追いついたのか、まだ及ばないのか、それとももう追い越したのか、気になるところ。

発表時に「UV2Aは液晶の夢の技術」というコメントがあったとのことだが、これは液晶全体というよりもシャープにとっての夢の技術ということだろう。


参考URL
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*1:MVAともいうらしいが、どっちが正しいのかよくわからん

*2:なぜそうなるのかは解明されていないらしい。