裸眼3Dディスプレイの仕組み3

裸眼3Dディスプレイは見る方向によって違う映像が見えるようになっていること、見る位置を固定しないためには視点数を増やす必要があることを説明した。
視差バリア方式やインテグラル方式があるが、これらはどちらも2Dディスプレイに工夫を付け加えることで、裸眼3D表示を実現してる。普通の2Dのディスプレイに、見る方向によって見える画素が限定されるような仕組みを追加してある。水平方向に並んだいくつかの画素をまとめて、それにレンズや視差バリアをつけて、あたかもひとつの画素が方向ごとに違う光を発しているような状態を作っている。

裸眼3Dディスプレイの本質

これはよく考えると、カメラが画像を撮影するのと逆のプロセスになっている。カメラの場合は、空間から飛んでくる光のうち、ひとつの方向からの光だけを撮像素子の画素に当てるようになっている。ひとつの画素に当たる光は、ひとつの方向の光だけになっているので、それぞれの画素がきちんと色を描き分けることができる。もしひとつの画素にいろんな方向からの光が当たってしまったら、その画素の色はほとんど真っ白になってしまってカメラとして機能しない。
このように、カメラというものは、空間中を飛んでいる光を、どの方向から飛んできた光なのかを区別して、データとして取り込む装置と言える。一方、裸眼3Dディスプレイは、どの方向へ飛ばすべき光なのかを区別して、データとして記録された光を再び空間中に放つ装置と言える。インテグラル方式のひとつの画素(複数画素+レンズの1セット)は普通のレンズを使ったカメラの逆プロセス。視差バリア方式のひとつの画素(複数画素+ついたての1セット)はピンホールカメラの逆のプロセスだ、ということができるように思う。


こう考えると、裸眼3Dディスプレイは水平方向だけじゃなくて、垂直方向でも方向ごとに違う光を飛ばしたって構わないし、その方がより現実に近い状態の光を再現できる、と考えることができる。これまでは水平方向の画素をまとめてひとつのレンズを置いていたが、水平垂直複数の画素をひとまとめにして、その前にひとつのレンズを置くようにすれば良い。インテグラル方式は本来こういう仕組み。レンチキュラ方式というのはそれを水平方向だけに限定した簡易版だ。


こうすると何が嬉しいかと言うと、水平方向の視差だけでなく、垂直方向の視差も再現できるようになる。水平方向の視差だけの場合は、首を傾けたり横になったりすると3D映像に見れなくなるが、垂直方向の視差も再現されていればそういう制限もなくなる。


こうして、裸眼3Dディスプレイは実際の空間を光が飛んでいるのとできるだけ近くなるような状態を再現させる。ディスプレイを置いた位置に窓があって、そこから自然の風景が見えているのと近い状態を再現する。裸眼3Dディスプレイは、単に視差を再現しているだけ、ということではないのである。


まとめ

裸眼3Dディスプレイの仕組みの本質っぽいことを書いてみた。ポイントは、水平方向だけでなくて、垂直方向にも方向ごとに異なる映像が表示されるようにすることで、カメラが画像を撮影する処理の逆のプロセスを実行するところ。こう考えると、裸眼3Dディスプレイに表示するための映像データはどうやって撮影したらいいのか、ということも分かる。次回はそのへんの話をしてみようと思う。




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