裸眼3Dディスプレイの仕組み

前回、裸眼3Dが目指すのは実風景と区別が付かないほどの立体感だ、という事を書いてみた。網膜上での視差まで再現できればそれが可能になる。が、そこへ到達するには視点数を相当に多くしないといけないので、簡単には実現できない。
なので、まず最初のステップとして目指すのは、両目の視差*1だけをきちんと再現できる裸眼3Dディスプレイ、ということになる。

で、裸眼3Dディスプレイで両目の視差を再現するには、右目の位置から見た映像と、左目の位置から見た映像とを違うものにすることができればOK。画面を右側から見た時と左側から見た時とで別々の映像を表示できればいい、ということ。右側左側それぞれで視差の付いた映像を表示してやれば、両眼の視差を再現できたことになる。
これを実現する3Dディスプレイとして、視差バリア方式とインテグラル方式とがある。これらはどちらも普通の2Dのディスプレイに、見る方向によって見える画素が変わるような仕掛けを施したものだ。

視差バリア方式(パララックスバリア方式)

視差バリア方式というのは「視差バリア(フィルター)を液晶の上に貼りつけて光の遮断と透過をコントロールする」などとよく説明される。が、これだと分かり難いので思いっきり簡単に言うと、ディスプレイの画素の前に細かいついたてが置いてあるようなイメージ。隣り合う2つの画素の前についたてが、画素から少しだけ手前に離して置いてある。で、このついたてが隣り合う画素のうちの片方を隠している。右目から見た時は隣り合う画素のうち左側の画素が隠れて見えなくなる。逆に左目から見た時は右側の画素が隠れて見えなくなる。これで、左右の目で見える画素が別々になるので、隣り合う画素ごと交互に右目用、左目用の映像を表示してやれば、3D表示の出来上がり、である。

インテグラル方式

こちらの方式は簡単に言うと、ディスプレイの画素の前に小さなレンズが置いてある。このレンズはかまぼこ型をしていて、レンチキュラレンズと言ったりする。なので、このレンズを使ったものをレンチキュラ方式と呼んだりもする。この方式は、隣り合う2つの画素を1セットとして、そこに1つのレンズが付いている。で、このレンズが隣り合う画素からの光の向きをコントロールしている。右目から見た時は左側の画素だけが見えるようにレンズが働く。逆に左目から見たときには右側の画素だけが見えるようにレンズが働く。これで、左右の目で見える画素が別々になるので、隣り合う画素ごと交互に右目用、左目用の映像を表示してやれば、3D表示の出来上がり。

視差バリア方式は画素の前のついたてが光をさえぎっているので、表示が暗くなるという欠点があるが、インテグラル方式だと光がさえぎられないので暗くならない、という違いがある。


こちらのサイトにそれぞれの方式の分かりやすい図があったので、引用させていただきます。
http://www2.aimnet.ne.jp/nakahara/3dart/sisen%5Bprx%5D.gif
引用元:視差分割方式 - 3Dの原理(5) stereocard

まとめ

裸眼3Dディスプレイの方式として、視差バリア方式とインテグラル方式について簡単に説明してみた。どちらも2Dディスプレイに一工夫加えることで、右目から見た時と左目から見た時とで見える画素が変わるようにしたものだ。こんな仕組みで、メガネ無しでも3D映像が見えるディスプレイが実現されている。
ただ、どちらの方式もきちんと立体として見るためには、ディスプレイを見る位置に条件が付いてしまう。頭の位置を変えたり、画面から離れたりしてその条件を満たさなくなると、立体として見えなくなってしまう。この辺について、次回説明してみる。




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4 3Dの仕組みが理解しやすい
3 もう少し掘り下げた内容がよかった

*1:右目から見た風景と、左目から見た風景は、目の位置が違うので微妙に違う。この違いが視差。