x.v.Color(xvYcc)が流行らない理由と、3D普及の条件

ソニー、3Dテレビを2010年に投入 VAIOやPS3も3D対応へ - ITmedia NEWS
ソニーが3Dテレビを商品化するらしい。家庭で立体画像が見られる新しい技術なのだが、これ、今後普及していくのだろうか。

新しい技術といえば、3年ほど前にx.v.Color(xvYcc)という色再現を向上する技術(というか規格)が登場している。この規格が登場してから3年程が経過したが、x.v.Colorが流行ったかというと、これがまったく流行ってない。その辺について考察してみる。


x.v.Colorが登場して3年。当時はxvYCCと呼ばれていたが、その後ソニーx.v.Colorの名前をつけて普及を促進しようとしていた。あのころは新しい技術が登場したことで多少は盛り上がってたような記憶がある。が、今ではその言葉を聞く機会はほとんどなくなっている。
x.v.Colorがなんなのかは、昔いろいろと書いたので詳しくはそちらを見ていただきたいが、簡単に言うと「今まで表示できなかった色が表示できるようになって、色が良くなるよ」というものだった。
x.v.colorとは結局どういうものなのか? - あんだあどらいぶ


まったく普及しなかったのかというと、そういうわけではなくて、ハードへの普及は着実に進んだ。薄型テレビはたいていx.v.Colorに対応してるし、ビデオカメラやブルーレイレコーダなんかも対応してる。もうほとんど当たり前の機能となっている。
でもたぶん、それを意識してハードを買ってる人はほとんどいなくて、なんだか分からないけど対応してる機能、という感じになっている。

一方でソフトへの普及はぜんぜん進んでない。TVの放送はもちろん非対応だし、ブルーレイのソフトも非対応。x.v.Colorで収録されてるコンテンツなんて聞いたことがない。対応コンテンツはx.v.Color対応ビデオカメラで自分で撮影した映像くらい。

どうしてこんなことになってしまったのか? 理由を3つほど考えてみた。

理由1.たいして良くならない

「今まで出せなかった色が出る」というのがx.v.Colorのウリだったのだが、今まで出せなかった色とはつまり、出てなくても気にならない色ってことだったのではないか。テレビで映像を見る分には今までの色で十分だったから、出せる色が増えたところでたいしてうれしくないと思われている可能性がある。実際、テレビが出せる色はx.v.Colorという規格よりもパネルの性能によって決まっている。で、パネル性能は今までと比べてそんな劇的に変わったのか?といわれると、確かに色再現範囲は広がったけど、そこまで大きく向上したとは言えない。せいぜい緑や赤のとても濃い色が出るようになったくらい。正直、「だから何?」と言われても仕方ない。

理由2.良さが分からない

そもそも、色の良し悪しは並べてみないと分からないものだ。単体で見てそれがいい色かどうかは分からない。変な色だと思っても、もともとそういう色の映像なのか、テレビの性能が悪くて変な色なのかは判別できないから。
それにテレビの色再現というものに正解はない。2台のテレビに同じ映像が映っていて微妙に色が違ってる場合、どちらが正しいのか?は判別できない。厳密には被写体と同じ色を表示してる方が正しいのだが、ふつうは被写体の実物がそこにあるわけじゃないから比べようがない。この場合、見る人が「きれい」だとか、「自然だ」と思ったほうのテレビが正しいのだ。
で、x.v.Colorに対応することによって、みんなが「きれい」と思うのか? たぶんみんながというわけにはいかないだろう。今までのテレビも、色再現範囲が狭いなりに画作りを工夫して、きれいな色が表示されるように作られている。結局x.v.Color対応の映像と、非対応の映像のどっちがいいかは好みの問題になってしまう。
つまり、ユーザーにとって良さが分かりにくく、対応してることのメリットが薄いと言える。

理由3.ユーザーメリットが特にない

上で述べたように、x.v.Colorに対応することのユーザーメリットが特に無い、ということは、コンテンツの制作側も対応するメリットを見出せないのではないか。ユーザーが喜ぶなら制作側もx.v.Color対応をすると思うが、そうでないならわざわざやらないように思う。
また、コンテンツ制作側は、従来の色再現範囲のテレビに合わせて色を作るノウハウをずっと蓄積してきているはず。なので、x.v.Color対応にしなくても十分きれいな映像を作れているのではないか。もしかしたら、そこらへんのノウハウの差が、コンテンツ制作者の差別化要因になっているかもしれない。だとすると、そういうノウハウを捨ててまでx.v.Color対応をやりたいとも思わないのではなかろうか。従来の色再現に最適化しすぎている、と言えるかもしれない。
あと、たいていコンテンツって違うメーカーから同じものが発売されたりしない。たとえば同じ映画のブルーレイディスクx.v.Color対応と非対応とが別々のメーカーから発売されてて、x.v.Color対応の方が売れる、ということがあるわけではない。だったらx.v.Color対応で出そう、というインセンティブも働かないだろう。


というわけで、ユーザーにとっても、コンテンツ制作者にとってもx.v.Colorに対応するメリットが薄いため、x.v.Color対応のコンテンツが制作されず一向に浸透していかない、という現象が起こってるのではなかろうか。と、妄想してみた。

x.v.Colorの今後

x.v.ColorというかxvYCCが意味のない技術かというと、決してそんなことはない。映像を表示するデバイスは進歩していて、色再現範囲は広くなっている。それにあわせて色再現の仕組み自体もアップデートしていく必要はあると思う。ただ、これを広めようと思ったら、ユーザー側のハードをx.v.Colorに対応させると同時に、制作者側のハードも対応させていき、どういうメリットがあるのかしっかり伝えていくべきだったんだろうな、と思う。
また、「好ましい色再現」から「忠実な色再現」へという考え方のシフトも必要で、それもきちんと伝えていくべきだったかもしれない。とはいえ、忠実な色再現を実現するということは、どのテレビを使っても同じ色が見えるわけで、色の美しさをテレビの差別化要因にすることができなくなる。これは、メーカーにとってはデメリットになる。なので、この考え方のシフトは起こらないかもしれない。であれば、x.v.Colorなんていらん、って事になる。

時間がたてば、だんだんとコンテンツ側でも普及が進んでいくのかもしれない。が、個人的には、ディスプレイ側の色再現範囲が今以上に画期的に向上しないと普及していかないように思う。でないと、やっぱりメリットが分かりにくい。

3Dはどうなのか

で、テレビ関係で最近熱いのが3D(立体表示)だが、この技術はちゃんと普及していくのだろうか。x.v.Colorと同じように、いまいち盛り上がらず終わってしまうのか。
3Dの場合はコンテンツ制作側はすでに対応している。主に映画の世界ではアメリカ中心に3Dが普及し始めているらしい。つまり、制作側がメリットをすでに認識しているし、それを見る観客も3Dのメリットを分かっている。そして、今までの2D映像と3D映像との違いは一目瞭然。ということは、3Dテレビは家庭にそのメリットをもたらすものとして受け入れられる可能性がある、といえる。
あとは、3Dで映像が見られることに価値を見出すユーザーがどのくらいいるか? また、どれだけ多くのユーザーに3Dの良さを伝えていけるか、にかかっている。

まとめ

x.v.Colorが流行らなかったのは、そのメリットがユーザーに分かり難いし、伝わってないから、と予想した。一方、3Dはそのメリットが分かりやすい。あとは3Dのよさをできるだけ多くのユーザーに伝えていけば、普及は進んでいくだろう。



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