色度図について(xy色度図とu'v'色度図)

昨日の記事を書いていて、メーカーによって使ってる色度図がちがうなー、と思った。色度図の違いについて頭の中にあることをメモ代わりに書いておくことにする。

ディスプレイが表示できる色は、世の中に存在する色の全てを表示できるわけじゃなくて、ある程度の範囲に限定されている。その範囲は色度図の上にディスプレイの原色をプロットして、その点を結んだ領域として表すことができる。ただし、このとき使う色度図にはバリエーションがあって、どれを使うかによって図の上で色の範囲の見かけが変わってくるので注意が必要。
よく使われる色度図には、座標軸にxとyを使うxy色度図と、座標軸にu'とv'を使うu'v'色度図がある。

xy色度図

xy色度図は、こちらの図のようなもの。
http://av.watch.impress.co.jp/img/avw/docs/385/668/rt13.jpg
引用元:【西田宗千佳のRandomTracking】開発陣に聞く「AQUOS クアトロン 3D」に込めた工夫 - AV Watch
この図の描き方を簡単に説明すると、まず色をXYZ表色系で数値化して、X、Y、Zそれぞれの値をX+Y+Zで割って正規化してx、y、zとする。このxとyの値をグラフ上にプロットすれば、xy色度図ができあがる。ちなみに、正規化してるので輝度の情報は無視されて、純粋に色の情報だけを扱うようになっている。明るさは違うけど、彩度、色相は同じ、と言う色は、同じ点にプロットされる。色度図というとこのxy色度図が一番よく使われてきたと思う。
ただし、xy色度図には欠点があって、それは色によって座標のスケールが違う、ということ。ある2色の色の差がどの程度あるのか?は、色度図上でその2点間の距離として表される。ところが、xy色度図ではそのスケールが色によって違っているので、例えば色の差が同じでも、赤に近い色は色度図上での距離が近いのに、緑に近い色では距離が大きく表示される、ということが起こる。たとえて言うなら、世界地図でロシアとか南極大陸が、他に比べて大きく描かれるのと同じようなもの。

u'v'色度図

u'v'色度図はxy色度図の欠点を解消するために考えられたものである。
u'v'色度図は、こちらの図のようなもの。
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080306/pana2_15.jpg
引用元:松下、“デジタルシネマに迫る”プレミアムVIERA「PZ800」
xy色度図は色によってスケールが違っていたので、これを色によるスケールの違いがなくなるように補正したものがu'v'色度図である。補正は座標軸を変換することで行われる。u'v'色度図を使うと2色の色の差が、色度図上の距離としてほぼ正確に表示できるようになる。色の差が均等に図示されるので、均等色度図と呼ばれる。最近は色度図というとこっちが使われることが多いような気がする。

色再現範囲の違いを色度図で説明するときには

以上のような特徴があるので、ディスプレイによる色再現範囲の違いを色度図で説明するときには、u'v'色度図を使うべきだ。
xy色度図だと、緑に近い色どうしの色の差は、赤に近い色どうしの色の差よりも誇張されて表示されるため、緑方向の色再現範囲の拡大などは、実際よりも見た目に大きく表示されてしまう。これだと色再現範囲の違いが、不当に誇張されてしまって、正しい判断はできないだろう。
ただ、ディスプレイの色再現範囲がより大きくなっているように見せるために、あえてxy色度図を使って説明する、ということもできるように思う。フェアなやり方じゃないだろうけど。

参考

色彩科学ハンドブック
CIE XYZ表色系(5): uv色度図




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