広色域ディスプレイが広色域な理由

最近発表された、広色域のディスプレイについて。
“超Adobe RGB”をうたう広色域液晶とは?――日本サムスン「SyncMaster XL」発表 (1/2) - ITmedia PC USER
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20080215/mitsu.htm
ひとつはサムスンの液晶モニタ。もうひとつは三菱のレーザーTV。

サムスンの液晶モニタはバックライトに3色のLEDを使って色再現範囲を拡大している。Adobe RGB比で123%との事。一方、三菱のレーザーTVは三原色のレーザーを光源に使うことで色再現範囲を拡大している。「通常の液晶テレビに比べて2倍の色再現範囲」との事なので、BT.709比で2倍ということだろう。では、LEDやレーザーでどうして色再現範囲が広がるか書いてみる。

どうして色再現範囲が広がるのか?

3色LEDで色再現範囲が広がる理由は、普通液晶モニタのバックライトに使われている蛍光管のRGB3原色よりもLEDの光の方が色の純度が高いから。そしてLEDよりもさらに色の純度が高いのがレーザー光なので、レーザーの方がLEDよりも色再現範囲を広くできる、はず(レーザーTVがどういう仕組みかよく分からないのでただの予想)。
色の純度が高いというのは、余計な色の光が混じっていないということ。たとえば、蛍光管の赤の蛍光体が発する光のスペクトルを見ると、ある赤色の波長のピークだけでなく別の波長成分も含まれていたりする(こちらのサイトの例参照)。なので、ある1色の赤色だけではなく、いくつかの色が混ぜ合わされた赤色が見えることになり、色の純度が低下する。
LEDの場合は余分な色の波長成分が通常の蛍光管に比べて少ないので、純度の高い色の光が出せる。
レーザーだとLEDよりもさらに余分な波長成分が少なく、ほとんどひとつの鋭いピークしか持たない(こちら参照)。なので、余計な色の成分がほとんど混ざらないため、色の純度がとても高くなる。

色の純度が高いと色再現範囲が広いのはどうしてか?

三原色の色の純度が高いほど、その色度点はCIEのxy色度図上で中心から離れていく。なので、三原色の3点を結んだ三角形が大きくなり、色再現範囲が大きくなる。xy色度図で、人が見ることのできる色を表すヨットの帆のような形の外周部分は最も純度の高い色になる。この外周部分はスペクトル軌跡と呼ばれ、この上に乗っている色は単一の波長の光(単色放射)の色になっている。つまり、レーザーの光はほぼスペクトル軌跡上に乗っているため、色再現範囲の三角形を最大まで大きくすることができる。
というわけで、RGB三原色の純度が高いほど、その色度点がスペクトル軌跡に近くなり、色再現範囲の三角形が大きくなる。ちなみに、xy色度図というのはこんなもの

色再現範囲の三角形が大きくなると何がいいのか?

ディスプレイの表示する色はすべてRGB三原色を任意の比率で混ぜ合わせて作られる。混ぜ合わせてできる色は、xy色度図上で、混ぜる2色の色度点を結んだ直線上にある。つまり、RGB三原色を混ぜ合わせてできる色は必ず三原色を結んだ三角形の内側の色になる。なので、三角形が大きいほど、よりたくさんの色を作ることができる。単純に、いろんな色が表示できるディスプレイの方が、できないディスプレイより性能はいいということでしょう。いろんな色が出せればそれでいいかというとそう単純ではなく、きちんとAdobe RGBとかx.v.color(xvYCC)といった色空間の規格に対応させないといけないのだけれど。


参考
スペクトル色々






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