蛍光管のバックライトで液晶テレビの色再現範囲を広げる方法

こちらでバックライトにRGB3色のLEDを使った液晶テレビや、光源にレーザーを使ったテレビで、色再現範囲が向上することを説明してみた。前回調べてみた結果によると、LEDを使った液晶の色再現範囲はかなり広くなることが分かる。
ところがそういうLEDを使って色再現範囲を拡大した液晶テレビは少数派で、たいていは蛍光管のバックライトで色再現範囲を拡大している。蛍光管でどうやって色再現範囲を拡大するのか考えてみる。

蛍光体の変更

こちらも説明したが、色再現範囲を広げるにはRGB三原色の色の純度を上げればいい。で、三原色の色純度を上げるには、それぞれの原色の光が余分な色の成分を含まないようにすればいい。スペクトルで見ると、余分な成分を持つ光の場合は、メインのピーク以外に、サブピークがあったりする。なので、サブピークを持たないような、もしくはサブピークが小さいような特性を持つ蛍光体を探してくればいい。

カラーフィルタの変更

カラーフィルタとは、RGB三原色が混ざった白色光から、RGBそれぞれ単独の光だけを通すものである。バックライトから発した光は、このカラーフィルタを通ることで赤、緑、青の色がつく。フィルタなので、たとえば赤のフィルタの場合は、いろいろな波長の光の中から赤い光の波長以外のものを遮断する働きをする。まあ、色セロハンみたいなものである。液晶テレビではパネルの方にこのカラーフィルタが貼られていて、赤緑青の光を作っている。
三原色の色純度を上げるには、このカラーフィルタをうまく設計して、蛍光体の発する光からサブピークの波長の光を遮断してしまえばいい。うまいことそういうことができるカラーフィルタが作れれば、色純度の高い三原色を作ることができる。

蛍光体の変更その2

上記の2つの方法はどちらも、三原色の光からサブピークの光を取り除いて色の純度を高めることを目的にしている。この方法以外にもうひとつ、三原色そのものの色がより原色に近くなるようにしてやる方法もある。
たとえば、三原色のうち赤の光はだいたい600ナノメートルあたりの波長の光が使われていて、スペクトルを見るとこのあたりにメインのピークがある。このメインのピークをもっと赤外に近いほうの650ナノメートルあたりに持ってくれば、それだけ深い色の赤が出るようになる。赤の色度点が深い赤の方に近づく分だけ、色再現範囲は拡大できる。

これらの方法のデメリット

以上の方法で蛍光管のバックライトでも色再現範囲を広げることができるが、課題もある。
蛍光体を変える場合は、スペクトルだけでなくて、発光効率や寿命のことも考えないといけない。テレビとして使う以上、消費電力や寿命も重要なのだ。蛍光体を変えることによって効率や寿命が犠牲になってしまうこともあり得るため、単純に蛍光体を変えてしまっていいというものでもない。。
カラーフィルタを変更する方は、輝度が下がってしまう可能性がある。サブピークを遮断するということは、その分の光が減ってしまうので、それだけ暗くなってしまう。明るさを保とうとすると消費電力が上がってしまうので、そう簡単にはいかないのだ。
逆に言うと、これらの方法で色再現範囲を拡大しているメーカーは、こういう課題を解決したということだ。


まとめ

各メーカーが実際にどの方法で色再現範囲を拡大したかはわからないが、たぶんこういう事をやっているんだと思う。メーカーのwebサイトの情報によると、ソニー蛍光体の変更でサブピークをなくすことと、メインのピークをより原色に近づけることの両方を行っている。シャープの4波長バックライトは、普通の赤以外に真紅の蛍光体を追加することで、赤全体の色味を深い赤の方向に持っていっている。

結局、蛍光管でもLEDでもレーザーでも色再現範囲を広げるための考え方は同じなので、値段の高いLEDを使わなくても蛍光管で色再現範囲を広げられるならそれでいこう、という方向で各メーカーが開発しているのだろう。





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