日本メーカーの製品のデザインがいまいちな原因

日本の家電メーカーが出す商品はなぜ”もっさい”のか - キャズムを超えろ!

日本メーカーの製品のデザイン、確かにあんまり良いとはいえない。特にヨーロッパの製品と比べるとそう感じる。その原因は上の記事でも言われてるようにメーカーの構造的問題という面もあるだろうが、それだけではないはず。製品のデザインを良くできない理由をいろいろと考えてみた。

製品デザインにまつわる制約

デザイン能力による制約

まずは、そもそもいいデザインのできるデザイナーが日本メーカーにいるのか?ということ。上の記事では、「モックの段階ではいいデザインもある」というが、ほんとにそうなのか。いいデザインだったからモックだけど人に見せてるだけではないのか。いいデザインができる人材がいないといいデザインの製品は出せないので、結局他社製品と似たような無難なデザインに落ち着く。

社内の承認制度による制約

上の記事でも言われてることで、社内の偉い人がいいデザインに口出ししてダメにしてしまう、というパターン。偉い人の思ういいデザイン、デザイナーの思ういいデザインがかみ合わないために起こる。結局どっちつかずで何がしたいのか分からない無難なデザインに落ち着く。

戦略上の制約

これも上の記事で言われてるけど、いいデザイン、といっても感じ方は人それぞれである。なので、デザインを尖らせていけばいくほど、それを良いと思う人の数も減っていく。上の記事の例でオリンパスE-P1があるが、個人的にはあれ、モックより製品のほうが好きである。なるべくたくさん売りたいのであれば、誰にでも受け入れられる無難なデザインにするか、とがったデザインを多くの種類で展開するかのどちらか。後者はコストがかかるしリスクもでかいので、結局万人受けするような無難なデザインに落ち着く。

技術的な問題による制約

デザイナーが考えたいいデザインを実現するだけの技術力がない、というパターン。薄かったり小さかったり細かったりで、製品の構造上無理があったりすると、それを克服するだけの技術が必要になってくる。電気製品の場合だと薄くて小さいものには熱の問題が付きまとうので、技術力のないメーカーには実現できないデザインも出てくる。それ以外にも、加工するの技術とかも要求されたりする。技術力のないメーカーでは「そんなデザイン作れないよ」といわれるので、結局どこでも作れるような無難なデザインに落ち着く。

コストによる制約

いいデザインにはコストがかかりがちである。デザインを良くするために使われる素材は高いのである。金属とかガラスとか。デザインのために余計な部品を使ったりすると、それもまたコストを上げる。コストが上がれば製品価格も上がるか、出なければメーカーの利益が低くなる。結局コモディティな素材を使った、どこにでもありそうな無難なデザインに落ち着く。

製造上の都合による制約

デザイナーと開発部門の人とが頑張っていいデザインを実現させて、「いいのできたよー」といって工場へ持っていくと、「そんなん作れねぇよ!」と怒られてしまうパターン。今までにない形だったりすると、使ってる機械が対応できなかったりする。そうなると新しい機械を導入したりしないといけない。また、作るのに時間のかかるようなデザインだと、工場での生産数が落ちてしまうので、そういうのも嫌われがち。結局、なるべく新規の要素をそぎ落として、今まで作ってたのと似たような無難なデザインに落ち着く。

安全上の問題による制約

いいデザインだからって安全への配慮を無視するわけにはいかない。技術面の制約で熱の例を出したけど、これは行き過ぎると火事になったりする危険な問題なのだ。で、たいていのメーカーには安全規格というものがあって、製品の形とか大きさとかに制約をかけている。あまり斬新なデザインにしてもこの安全規格をクリアしないと意味ないので、結局今までと同じような無難なデザインに落ち着く。

ユーザビリティによる制約

デザインに凝った製品というのは、使いやすいとは言い難いものもある。斬新なデザインと使いやすさを両立するのは大変なのである。たとえば、テレビのリモコン。日本メーカーのは、ボタンとか文字とかおおきくて、はっきり言ってダサいと思うが、それが結構使いやすさに貢献している。あまり奇抜な見たことないデザインだと、目的のボタンがどこにあるのか分からなくなったりしてしまうこともあるだろう。結局、使いやすさ優先で、なじみのある無難なデザインに落ち着く。

まとめ

いろいろとデザインに制約をかけるものを挙げてみた。ただ、これらが単独でデザインの足を引っ張ってるのではなくて、これらの要因がいろいろと絡み合っている。なので、いいデザインの製品がなかなか生まれない。これらを全部クリアして、ようやくいいデザインの製品が世に出るのであって、それはそんなに簡単なことじゃないはずだ。

そう考えると、これらの要因が日本メーカーと海外メーカーとでそんなに違ってるとは思えない(安全規格とかは海外の方がゆるいのかもしれないけど)。なので、「海外メーカーのデザインが日本メーカーより良い」んではなくて、「海外には日本メーカより良いデザインの製品を出してるメーカーもある」、ってのが実際のところなんじゃなかろうか。

続き

日本メーカーの製品デザインがいまいちな原因その2 - あんだあどらいぶ




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