映像の製作者が求めるものとは?

THX認証を受けたシャープの液晶テレビアクオスTシリーズのレビュー的な記事があった。
シャープ初のTHX認定液晶テレビで「レミーのおいしいレストラン」の驚愕画質を味わう (1/2) - ITmedia NEWS


THXとは、シャープの説明によると「映画制作者の意図した音響と映像を忠実に再現するべく作られた規格」でジョージ・ルーカスルーカスフィルムが作ったそうだ。
THX認証の条件は何だろうか?と前から気になっていたが、この記事によるとその条件の一部は以下の3つらしい。

  • 画面全体のユニフォミティ(白の均一性)を完璧に維持すること
  • 全輝度領域で色温度6500ケルビンを完璧に維持すること
  • 2.2乗標準ガンマカーブを完全トレースすること


これだけでは完全とか完璧というのがどこまでのレベルを求めているのかは分からないし、またこれ以外に条件はないのかどうかも不明。ただ、この3つの条件は「ディスプレイの基本」だと思う。ようするに「規格どおりのディスプレイをきっちり作りなさい」ということではなかろうか。



液晶テレビの場合、ユニフォミティは拡散版の枚数を増やす等すればある程度達成できると思う。
色温度6500Kにするのは、バックライトの蛍光体の配分を変えればいい。普通の液晶テレビのバックライトは青白いので、それをもっと赤っぽいものに変えればいい。色温度6500Kの蛍光灯は普通に出回っているし、これ自体はそんなに難しくないはず。
全輝度領域でその色温度を維持するのは、各階調でのRGBの輝度バランスを一定に保てばいい。これにはRGBごとにガンマ補正ができる回路を備えればいい。すべての輝度領域で精度良くガンマ補正を行うには、それなりの回路が求められるし、ずれが出ないように時間をかけて調整を行う必要もある。
2.2乗標準ガンマカーブをトレースするのもガンマ補正回路があればOK。これも精度良く調整するにはガンマ補正回路の性能と、そのチューニングにかかる時間が求められる。ガンマを2.2乗にあわせるのと、色温度を一定に保つのは同じ回路で実現可能なはず。


基本的にディスプレイはたいていこの3つの条件を満たすことを目指して作られている。なので、たいていのテレビ等にはガンマ補正回路が備わっている。が、コストの問題だったり、製造時の工程の効率のためだったりで調整にかける手間を惜しむと達成できるレベルが変わってくる。生産台数を増やそうと思えば、ガンマや色温度の調整にそんなに時間をかけずに済まさないといけないので、量産品の場合はある程度の調整ができればそれでOKとしていると思う。
シャープのTHX認証の液晶テレビは受注生産のようなので、1台1台手間暇をかけてしっかりと調整が行われているのだろう。


ところで、上記の3つの条件が求められるということは、記事中にもあるが、映画の製作者側の人たちは「ディスプレイ側で勝手な画作りをして欲しくない」と考えているといえる。
よく「製作者の意図通りに表示するのが良い」と言われるが、それは余計な画作りや画像処理はしない方がいいということ。テレビメーカーがみんなこれにのっとって製品を作ると、すべてのテレビの画質が同じになってしまう。というか、すべてのテレビが同じ画質になるように規格が決められているのだから、そうするのが当たり前かもしれないが、それだと画質で差別化できなくなってしまう。製作者の意図を表現しながら、独自の技術で画質の差別化をしようと思うと、メーカーにとっては悩ましいことのような気がする。



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