色にこだわって薄型テレビを選ぶには

薄型テレビの選び方として画質を重視する人は多いと思う。画質の中でも「色」は見た目に分かりやすく、人による好みもいろいろなら、メーカーの目指すものもいろいろ。テレビを選ぶときの色についての考え方をまとめてみる。


テレビの目指す色再現は「対応する色再現」と「好ましい色再現」の2つだといえる。昨日書いたが、映像の製作者側はテレビでの画作りを求めていない。色再現に関して言えば、映像の製作者がテレビに求めているのは「対応する色再現」の方を求めている。

一方、現在市販されているテレビはどうか?というと、これらはたいてい「好ましい色再現」を目指して作られているようだ。というのも、「対応する色再現」を実現するとすべてのメーカーのテレビが同じ色で表示することになる。そもそもそうあるのが正しい、という考え方もあるが、色再現で他社より優れていることをアピールして売り上げにつなげるためにはそれでは困るのだ。というわけで、各メーカーが「自然な色再現」とか「鮮やかな色再現」とか「色再現範囲○○%向上」とか「赤の再現性が向上」などと自社のテレビの色の良さをアピールしているのである。


ということは、現状のテレビは製作者の意図を無視して勝手に色を作り変えてることになる。「勝手なことするな!」という考えが当然出てくるわけだが、単純にそれが悪いことかというと必ずしもそうじゃない。

「対応する色再現」のためには、色に対して余計な映像処理をしないで規格どおりに表示すればいい。「好ましい色再現」の方は色に対して何かしら映像処理を行っている。この2つの映像が並べられているとどう見えるかというと、たいていは映像処理を行ったほうがきれいに見えるのである。きれいに見えるように映像処理しているのだから当然なのだけど。
赤黄色っぽい白よりもやや青白いに近い白の方がきれいに見えるし、くすんだ色がより鮮やかになっている方がきれいだと感じるものである。映像処理のありなし2つが並べられていると余計にそう感じるだろう。素のままの映像の色は処理された映像の色と比べると、どうしてもくすんだように見えてしまう。


じゃあ、「対応する色再現」=製作者の意図する色と「好ましい色再現」=きれいな色のどちらがいいのか?となるが、それは見る人の判断にゆだねられている。好きな方で見ればよいのだと思う。たいていのテレビには「スタンダード」的な映像モードと「シネマ」的な映像モードを備えていて切り替えができる。スタンダードはきれいな色を目指していて、シネマは製作者の意図を大事にしている、はずなので、自分の好みの方を選んで見ればよいと思う。

したがって、テレビを選ぶときには自分がどちらの色再現を求めているのかを意識して選ぶのが良いと思う。映画やアニメなどの映像作品を見るときに製作者の意図通りの色で見たいなら、テレビの「シネマ」モードの画質をチェックした方が良い。一方、スポーツやバラエティなどをきれいな色で見たいのなら「スタンダード」モードの画質をチェックして選ぶと良いのではなかろうか。
「スタンダード」「シネマ」といってもメーカーによっていろいろで、「スタンダード」でも製作者の意図に近い色を目指して、「モニター的な画作り」をしているメーカーもあるだろうし、逆に「シネマ」でも派手めな色再現で映える映像を表示しようとするメーカーもあるだろう。前者なら「HDTVの色域を100%カバー」などと規格にぴったり合っていることを謳っているかもしれないし、後者なら「鮮やかな色再現」などと謳っているかもしれない。「色」にこだわるのであれば、そのあたりをチェックしてテレビを選ぶのもひとつの考え方だろうと思う。ちなみに「ダイナミック」的なモードは販売店の店頭での見栄えだけを求めたモードなので、これで色をチェックするのはあまりお勧めしない。


ただ、残念ながら普通の電気屋さんの店頭だとテレビの色のチェックはなかなか難しい。照明が明るすぎるし、同じ映像を流して比較できるようにはなっていなかったりする。販売店の店頭も、普通のリビングと同程度の明るさだったり、もっと照明を暗く調整できたりとか、実際にテレビを見る環境を同じ状態を再現して、各社の画質の差を比較できるようになればいいと思うのだが。