プラネテスでロックスミスの言う人間の苦しみとは何か?

プラネテスについて思うこと - あんだあどらいぶ
プラネテスについての考察 - あんだあどらいぶ
上の2つの記事で、人類は苦しみ続けているという事を書いたので、こんどは苦しみって何?について書いてみる。
一言で言うと、人類の苦しみとは、進歩し続けなければいけないこと、だろう。


農業は人類の原罪だ、という考えがある。こちらの農業は人類の原罪であるという本に書かれてる。だいぶ前に読んだものなのでうろ覚えだけど、内容は次のような感じ。
人類が狩猟採集生活をしていた頃は気候も良くて、獲物やら果物やらが豊富にあったので、それほど苦労も無く暮らしていた。でもしょせん狩猟採集生活なので食料の供給は不安定。だからそれほど人口も多くなかった。で、あるとき人類は農業をやり始めた。農業によって安定的に食料が手に入るようになったので、人口が増え始めた。すると今度はその増えた人口を維持するために農業をやめることができなくなった。どんどん増えていく人口を食べさせていくには、農業もどんどん拡大、進歩させていかなきゃいけなくなった。こうして人間は永遠に働き続けなきゃいけなくなったとさ。文明が発達した現代でも、やっぱり同じように働き続けているのでした、というお話。

この話が正しいかのどうかはなんともいえない。食料を確保するためという目的意識で進歩してきたのではなくて、もともと人間には進歩したいという本能みたいなものがあって、それによって進歩し続けてた結果、人口が増えてったのかもしれない。どちらにしても、「進歩し続けてきた」のは事実。


進歩し続けないと食料が足らなくなってしまうというのは、なかなかきつい状態といえる。農地をどんどん増やさないと作物は増やせない。畑として使える土地が足りなくなったりしたら大変。そしたら森や荒地を耕して畑に変えてかなきゃいけない。そのためには森を切り開いたりするための技術が必要になる…、という進歩を延々と続けなきゃいけない。もしどこかの時点で農業を拡大するのをやめてしまっていたら、そこで進歩は止まってただろう。で、作物が足らなくなって争いが絶えなくなって、人間は衰退してて、今みたい繁栄は訪れなかったかも。進歩を続けなかったら発展はないどころか、争いと衰退の道が待ってる。下手したら人類絶滅もありえたかも。
人間は進歩し続けないと死んでしまう、ある意味つらい運命なのかもしれない。


この構図は現在でも変わってないように思う。人間は現在、石油をはじめとする化石燃料に依存しきってる。もしこれが枯渇するようなことになれば、燃料の奪い合いになって戦争だって起こりうる。なので、そうなる前に代替エネルギーを探さないといけない。枯渇しなかったとしても、石油を燃やしてCO2の排出を続けていれば地球温暖化で大変になる。やっぱりそうなる前に代替エネルギーを探すとか、CO2を出さない方法を見つけないといけない。現状維持では先がないので、進歩するしかない。また、いちど化石燃料に依存した社会として発展してきている以上、いまさらそれ無しの社会に戻ることもできない。
これから先、次から次へ石油を掘り続けるか代替エネルギーが見つけなきゃいけないというのは、結構な困難なんじゃなかろうか。


進歩することによって幸せを手にしてきたが、いちど進歩し始めてしまったらこんどは進歩をやめるわけに行かなくなる。そういう状況を続けていった先に、プラネテスの世界があるんじゃなかろうか。そこで人類は核融合を手にするまでに進歩している。それでもやはり進歩を止めることはできない構図は変わってない。だから困難と分かっていても宇宙のより遠くを目指さなきゃならない。そうしないと人類は立ち行かない。

ロックスミスの言う「人間の苦しみ」とか、ラモン博士の言う「宇宙開発は人類に課せられた罰であり罪そのもの」というのは、そういうことなんじゃないかと思う。勝手に思ってるだけだけど。




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